がんと診断され、不安な思いをされていることと思います。
ここでは当科のがん診療の特徴について紹介します。
標準治療
当科では、抗がん剤のスペシャリストである腫瘍内科医があなたにもっとも適した治療を提案します。
「標準治療」とは、過去から現在までに世界中で行われてきた臨床研究の結果、現時点で最良と考えられている治療です。
当科ではこの世界水準の「標準治療」をまず提案します。
しかし、最善の治療とは、科学的な根拠に基づく治療方針はもちろんの事、診療経験に基づいた個別の臨床判断や、患者さん自身の意向を考慮したものであるべきと考えてます。
あなたにとってベストな選択を一緒に考えましょう。
がんゲノム医療
がんゲノム医療とは、遺伝子情報(ゲノム)をもとに診断し、患者さん一人ひとりの体質や病状に合った薬や最適な治療法を提供することです。
最近の研究によって、「がん」は、 (1) 体の細胞の中のさまざまな「遺伝子異常」が積み重なることによって発症すること、 (2) 同じがんでも、患者さんごとに、その「遺伝子異常」が異なることが分かってきました。例えば、同じように「大腸がん」を発症しても、患者さんごとにその遺伝子異常が異なり、がん細胞の特徴や治療薬の効果に違いがある一方で、「大腸がん」と「乳がん」のような異なる臓器のがんでも、同じ遺伝子異常が生じる場合があることが分かってきました。すなわち、乳がんで効果を認める薬剤が、乳がんによくみられる遺伝子異常を持つ「大腸がん」でも効果を認める可能性が期待できます。
標準治療がすべて耐性となった場合でも、もし他臓器で認めるような遺伝子異常が生じていて、それに対する治療薬があるときには、その治療薬を使用することで治療の効果が期待できることが分かってきました。これらの遺伝子異常は2019年に保険適用された「がん遺伝子パネル検査」で測定が可能です。この遺伝子検査を用いてゲノムをもとに「がん」を診断し、患者さん一人ひとりの体質や病状に合った薬や最適な治療法を提供することが「がんゲノム医療」です。 当院は2019年4月にゲノム医療推進センターを設立し、同年9月に「がんゲノム医療拠点病院」に指定されました。腫瘍内科では、このゲノム医療を積極的に行い、標準治療がない、または標準治療が終了した方に対して、さらなる治療選択肢を提供するだけではなく、治療前など早い段階で遺伝子検査を行うことにより、治療前からがんの特徴をつかんでより効果的な治療戦略を立てることを提案しています。
がん治療開発の中心的存在
より良いがん治療を探求することも大学病院の使命です。そのため、当科では様々な治験・臨床試験を行っています。治験・臨床試験には国内や海外の施設と連携して行っている大規模なものもあります。
治験や臨床試験には様々な登録基準があるため、どなたでも参加できる訳ではありませんが、もしそれがあなたの大切な治療のチャンスになる場合には提案する事ができます。
また現在ほかの病院で治療を受けられている患者さんでも、条件に合えば治験・臨床試験に参加する事ができます。一度話を聞いてみたい方は、現在の主治医にセカンドオピニオンの相談をして、可能な限り紹介状を持参して来院ください。
多職種チーム医療
あなたの生活をできるだけ維持しながら治療が続けられるように、多くの専門家とチームを組み、連携して知恵を絞ります。
診察時には、ご自身の病気や症状に対する心配だけでなく、療養に関する心配など病気以外の気がかりについてもよくお伝えください。
チームを構成する専門家
外科医師、放射線科医師、病理医師、他の専門内科医師、精神科医師、緩和ケア医師(チーム)、麻酔科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、心理士、メディカルソーシャルワーカー(MSW)、治験コーディネーター、メディカル・コーディネーターなど。
薬剤師
看護師・サポートスタッフ
緩和ケア治療
がんそのものに対する治療と同時に、緩和ケア治療も大切です。緩和ケア治療とは、抗がん剤治療の副作用による苦痛だけでなく、がんによる様々な苦痛、また悩みや不安に対応するものです。
がんの苦痛に対する治療は、必要であれば診断と同時に開始され、継続的に行われるものです。緩和ケアは、痛み止めや吐き気止めなどの薬による対症療法もあれば、腸閉塞に対する手術や、骨転移の痛みに対する放射線療法などの治療も含みます。
これらの処置は、腫瘍内科と緩和ケアチームを含めた院内の他の医療チームと連携して行います。
最近の研究では、このような緩和ケアを治療の早期から行うことで、がん患者さんの生活の質を保ったり、生存期間を延長する可能性が示唆されています。
臨床試験のサポート
臨床試験の結果は、薬剤の承認や適用の拡大に繋がる可能性があるため、プロトコールという決まりに則りきちんとした形で行われる必要があります。プロトコールを守り臨床試験を行うことは、臨床試験とその結果の質を保つ上で大変重要な部分です。このプロトコールは、臨床試験のきめ細かな部分まで決められており、現場の医師にとって、プロトコール通りに試験を行うことに大きな労力が必要になります。
当講座では、臨床試験・研究を支援するスタッフが、この部分をサポートし、臨床試験の効率化と質の担保に努めております。医師だけではなく、このようなメディカルスタッフを含めた”チーム”で臨床試験・研究に取り組み、適正で円滑に試験が実施できるようにしています。医師だけではなく、このようなメディカルスタッフを含めた”チーム”で臨床試験・研究に取り組み、適正で円滑に試験が実施できるようにしています。
地域に根ざしたがん診療の拠点
あなたの病状や生活環境によっては、普段の暮らしを続けながら安心して治療を継続するために、在宅医の先生たちと連携しながら治療を行うことがあります。
頻回に痛みどめの追加処方が必要な場合や、在宅での点滴が必要な場合、ときには医師や訪問看護師の往診が必要な場合など、お住いの近くの在宅医の先生と連携できていると安心です。
信頼できる在宅医の先生を当院のメディカルサポートセンター(MSC)のスタッフがご紹介させていだきます。
連携先が決まったら、主治医が詳細な診療情報提供書を作成し、出来るだけあなたの病状を共有しながら診療にあたります。